大まかにいくらくらいですか?という問い合わせにたいして
例えばですが、お電話によるお問い合わせで、
「汁椀の塗り直し修理はいくらくらいですか?」
と聞かれても、サイズや状態によって費用が変わるのでどう答えていいのやら・・・と思うことがあります。
修理費用より、まずは修理できるかどうかの判断が先だと思っています。
もちろん、木製なのか、樹脂製なのか、木目を活かした仕上げなのか、黒や朱の漆仕上げなのか、蒔絵はついているのかなどの質問をさせていただいて、できる限りの情報をいただいて、「修理できるとするなら、このくらいかかります」という答えをするときはあります。
これはあくまでも私の想像の中での修理費用であって、実際拝見して職人と相談するまでは正確な見積もりは出せません。
問い合わせをしてくださる方も、そんなことはわかって下さっているんです。ただ、どのくらいかかるか見当もつかないから目安を教えてほしいからなんだと思います。それによって修理するかしないかを判断したいということなんでしょうね。
漆器修理の費用算出の難しさ
先ほど、「実際拝見して職人と相談するまでは正確な見積もりは出せません。」と書きましたが、正直に言うと、実際拝見しても正確な見積もりが出せないこともあるんです。
だけど、そこを無理にお願いして費用を算出してもらっていることも。
例えば、
今まで修理したことのないような変わったもの
産地が違う漆器
下地が相当弱そうな漆器
など、実際修理してみないと本当のところはわからないということが今までにもありました。
そして、見積もりした金額が安すぎたという失敗例も過去にはあります。
自分が作った漆器を修理するのは作業工程などがわかるのでまだやりやすいのですが、かなり昔の時代に、全く違う産地の職人が作ったものを修理するというのは、想定外のことなども起こり得るということを学びました。
そういう苦い経験が職人や私たちにはあるので、最初の頃より更に慎重に見積もりをしています。
その逆で、思ったより安い費用で修理できたということも稀にあり、請求金額を見積もり金額よりお安くする場合もありました。
自分がもし修理してほしい立場だったらということを常に頭において見積もりすることを心がけています。だから、メールで返信する文章もかなり時間がかかってしまい、ここは私自身の課題でもあります。
職人に気持ちよく修理してもらうための修理費用
漆器修理の費用は、修理をしてくれる職人が決めた金額で算出しています。
私がどうこういうことはできません。
もし私が、少しでも安くしてなどと言ったら、頼まれた職人はもしかすると多少の値引きをしてくれるかもしれませんが、職人の気持ちはどうでしょう?
手間のかかる修理を引き受けて、安くしてくれと言われたら、私だったらあまりいい気持ちはしません。安くしたんだから、これくらいいいか、みたいな気持が出てくるのも嫌です。
気持ち良く修理してもらうためには、職人がこれでいいという金額でお願いするのが私の中の決めごとです。
職人は、修理して大事に使っていこうと考えているお客さんの喜ぶ顔を思い浮かべて修理してくれるんです。
そのためにも、お客様の思いなどもなるべく職人に伝わるようにするのが私の役割です。