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白木の曲げわっぱ弁当箱を拭き漆仕上げにしました

愛知県 K様よりご依頼いただきました。

 

曲げわっぱ弁当人気のせいか、

曲げわっぱ弁当箱の修理ご依頼は増え続けています。

ご依頼の多くは、拭き漆が剥がれてきたということで、

拭き漆をし直すパターンなのですが、

今回ご紹介するのは、白木のお弁当箱を拭き漆に仕上げた事例です。

 

白木の曲げわっぱのお弁当箱
白木の曲げわっぱのお弁当箱

そもそも最初は修理のお問い合わせではありませんでした。

 

「新しく白木のお弁当箱を購入しようと思っているのですが、

その白木のお弁当箱を拭き漆にすることができますか?」

というお問い合わせだったと記憶しています。

 

拭き漆の仕上げにすることは出来るのですが、

元々の仕上がりの状態によって色の出方が変わってきます。

※色の出方に関しては後ほどの修理作業の写真でご覧いただけます。

 

何度かやり取りする中で、

 

「そういえば、現在持っている曲げわっぱが、

外側がウレタン塗装で、内側が白木なんですけど、

内側の黒ずみが気になって使っていませんでした。

もしきれいになるのであれば、これを修理して使った方が

新たに曲げわっぱを購入して拭き漆をしてもらうよりも安価ですよね。

拭き漆仕上げの曲げわっぱが欲しかったですし、

現在持っているものを活かすというのも大切ですね。」

 

こういう流れで、一度送っていただくことになりました。

 

 

 

 

修理前の曲げわっぱ弁当箱の状態

送っていただいたお弁当箱の写真です。

内側の黒ずみはそれほど気にならない状態でした。

これくらいなら普通に使っていらっしゃる方も多いのでは?

 

K様がおっしゃっていた通り、

外側はウレタン塗装仕上げ、内側は無塗装のお弁当箱です。

外側は、内側から比べると多少つやがあるのが分かりますでしょうか。

 

曲げわっぱのメーカーによって、

全体をウレタン塗装するところもあれば、

無塗装で販売しているところもあれば、さまざまです。

それぞれの長所、短所を理解したうえで、

お好みのお弁当箱が見つかればいいですね。

 

 

蓋にうっすらヒビ
蓋にうっすらヒビ

よく見ると、フタにうっすらとヒビが見られ、

ほんの少しの隙間が出来ていました。

K様に確認したところ、気付かなかったということでしたが、

まずは、接着することになりました。

 

 

 

ヒビの接着作業

隙間に漆を入れて接着しました。

漆は接着材としても使います。

黒い線となって出てしまいますが、

了承を得てのことです。

 

漆がしっかり乾いて、接着ができたら

いよいよ拭き漆作業を進めていきます。

 

 

 

 

「研ぎ」と「木地固め」

全体を研ぐ
全体を研ぐ

全体をペーパーでまんべんなく研ぎます。

 

 

内側も研ぐ
内側も研ぐ

 

まんべんなく研いでも、黒ずみは残ります。

浸みついた黒ずみは

多少薄くなっても消えることはありません。

 

 

 

 

木地固め
木地固め

木地固めとは、白木に漆を吸い込ませるだけ吸い込ませる作業で、

木地を固く丈夫にし、土台を作る大事な工程です。

いわゆる木に免疫をつけるようなものです。

 

生漆(きうるし)を専用の薄め液で薄めて、

刷毛を使って全体に塗っていきます。

 

 

内側に塗って間もなくの状態です。

これが、どんどん変化して・・・

 

 

 

お弁当箱内側の木地固め
お弁当箱内側の木地固め

 

一日経つと、こんなに色が濃くなります。

無塗装なので、十分に漆が浸みていったということです。

 

最初は半透明の褐色だった生漆が、空気に触れることで濃い茶色に変化しました。

 

 

 

ちなみにウレタン塗装が施してある表側は・・・

元々ウレタン塗装が施してあった表面は、

いくら研いでも、ウレタン塗装が残っているため

無塗装のように漆が浸みていきません。

 

一度目の拭き漆をして、一日経っても、黒っぽい茶色にはなりません。

 

ウレタン塗装と無塗装では、ずいぶんと色の出方が変わります。

 

 

木地固めした後は、まんべんなく研いで、

拭き漆作業を5、6回繰り返します。

 

 

 

 

仕上がり

白木の曲げわっぱ弁当箱の拭き漆仕上げ
白木の曲げわっぱ弁当箱の拭き漆仕上げ

拭き漆を6回かけて、仕上がった状態の曲げわっぱです。

5,6回拭き漆を重ねることで、漆のつやがきれいに出てきます。

色の違いは納得いただいたうえで、仕上げました。

 

 

ヒビを接着した部分は黒い線のまま残りますが、

隙間はないので、安心してお使いいただけます。

 

 

 

 

今回のお直し期間

☑ 約1ヶ月

 

 

今回の修理費用の目安

☑ 5,000円~6,000円

 

(注) おおよその修理費用としてご紹介しておりますが、修理の方法の他、年々材料費の高騰により変化してます。

ご依頼いただく際はその都度お見積りさせていただきます。ご了承ください。