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本梨地(ほんなしじ)と銀平目(ぎんひらめ)

本梨子地と銀平目仕上げの重箱
本梨子地と銀平目仕上げの重箱

お嫁入り道具の一つが本梨地と銀平目の重箱

私が結婚する時、祖父が持たせてくれたのが、数珠と写真の重箱でした。

 

数珠は淡いピンク色の上品な色合いで信仰深かった祖父らしい贈り物だなぁと思っていましたが、ずっと重宝していて、今では有難味が増しています。

 

それから、この重箱をもたせてくれました。漆器屋に生まれ育ったという感じですよね(笑)

木製の四段重で、外側をよくみると全体に布が貼ってある上から漆が塗られていて呂いろ仕上げ(磨き仕上げをして艶を高くする)が施してあります。

※呂いろ仕上げって何?という方はこちらの記事をご覧ください。

 

そして重箱の内側は二段が本梨地、もう二段が銀平目という仕上げ。本梨地も銀平目も呂いろ師さんならではの技術です。

 

20代でまだまだ若かりし頃この重箱を渡された時、なんてあっさりとした華やかさに欠ける重箱って思ってました。実は他にも茶托やお盆なども持たせてくれたんですけど、それには華やかな蒔絵が入っていたもので・・・まさに見た目でしか判断していなかったのです。

 

 

今になってすごい貴重な重箱なんだと知った

なぜ、嫁入り道具の重箱のことを思い出したかといいますと、以下のようなことがあったからです。

 

先日、あるお客様から内側が本梨地の重箱が送られてきました。フタにヒビが入っていて、梨地の部分にも少なからずヒビが見受けられました。梨地の修理はできるのだろうか?ということを調べました。

 

私が持っている重箱は、ずいぶん昔に現役を引退された職人さんなので、その方に修理してもらうことは不可能です。※現在90歳を超えられていて、とてもお元気なのですが。

その息子さんに聞いたところ、梨地の粉がもう手に入らないんじゃないかということや、そもそも梨地をする職人さんがいるのかどうか・・・ということでした。

 

今では梨地といえば、漆仕上げに似せた塗装仕上げがほとんどで、本物の漆で仕上げる梨地はほぼ見かけません。

 

そんな風に調べている時に急に私が持っている重箱のことを思い出したのです。

 

漆器は、塗り直して何世代も受け継いでいくものなのに、もしこの重箱にヒビが入ったり塗りが剥げたりしたなら、この越前漆器の産地では同じように修復できないかもしれない

 

そう思ったら、すごい貴重なものなんだと思えてきて、この重箱を持たせてくれた祖父にも感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 

 

漆器の修理の難しさ

今回のお客様から送られてきた重箱は一旦お返しいたしました。お役に立てず申し訳なかったです。

 

漆器の修理の難しさをひしひしと感じています。

 

・おおよその修理費用というけれども、やってみないとわからないこともある。

・産地独特の技術で作られたものを他の産地の職人は同じような技術で仕上げることはできない。

・どの産地も昔ながらの伝統工芸の職人が確実に減ってきているという現実。

 

このような状況で私がどこまでお役に立てるのか?

そんな風に思う事もありますが、お客様からの「ありがとう」というお言葉にまた勇気をもらって出来ることは精いっぱいさせてもらおうと思っています。